Tomopiia 対話看護専門士
SNISインタビュー
香川県在住
デイサービス看護師のまり子さん
総合病院勤務の後、高校看護科教諭、大学の看護学分野助教をしていましたが、家族の介護のために転職しました。大学でがん看護の研究を行い、つらい治療を受けながら生き抜く患者さんの強さや幾多の思いに感銘を受けることが多かったので、転職後も患者さんとかかわるような何かができないかと思っていました。
自分が入院したとき、ベッドサイドに看護師が来てもなかなか思っていることを言えず、聞けなかった経験から「患者さんは看護師に言えないことをいっぱい抱えている」ことや、医療者がそばにいない退院後にも不安が募りやすいことに気づきました。だから患者さんの身近に寄り添うようなことがしたいなと思っていたときに、TomopiiaのSNS看護の研修を知ったのです。もともと文章表現で言葉を吟味することや、ものごとを伝えることに興味があったので、「自分の望んでいるものが学べる」と思いすぐに申し込みました。
また、それまで教員として学生に「患者理解や関係づくりのためのコミュニケーション」を指導してきましたが、看護師としてもう一度、自分が患者さんとのコミュニケーションをどれくらいできるのかを確認してみたいと思ったのです。
“まとまりのない言葉が途切れ途切れに出てくるリアリティ“に立ち会える
Tomopiiaに出会うまでは、「患者の良い変化をめざして意図的に働きかけるコミュニケーション」を行い「多角的に情報を得て分析し問題解決をする」というのが看護だと思っていたのです。
ところがTomopiiaではそういった情報よりも、患者さんの発した言葉に集中し、言葉から伝わってくる患者さんの感情やその奥にある思いに感覚を研ぎ澄ませ、まずはひたすら受け止めます。そして大事に受け止めたことを、その患者さんに伝わる言葉で伝えます。質問攻めをするのでもなく、安易に「わかりました」とも言わずに、相手の思いへの解釈がずれないように確認したり、話しやすいところから具体的に話していただけるよう言葉を選んで問いかけます。そして話してくださったことに感謝を伝えます。これはSNSで文字を見ながらだからこそやりやすいと思いました。
Tomopiiaの研修を受けてからのやり取りで良さを感じたのは、患者さんの思いがまとまりのない形で途切れ途切れに出てくるところです。話としてまとめられる前の、本音とか言えなかった思いがつぶやきのように現れ、そこから言葉になる瞬間に立ち会うことができるところに“リアリティ”があります。そこを経て、溢れるように思いを綴られる患者さんもいらっしゃいます。リアルタイムに出てくるところにTomopiiaならではの良さがあると思います。
臨床の制約のなかで患者さんの本音が出る瞬間に立ち会うことはむずかしいと思います。Tomopiiaでのやり取りには、病気や治療、今後への複雑な気持ち、実際に日常生活や仕事で体験する多様な不安や思い、言いにくい気持ちが現れます。
患者さんが抱える葛藤や不安との共存について、教科書的には「折り合いをつける」という言葉でよく表現されるのですが、その「折り合い」は対話の中で繰り返し語ることや違う側面から考えることを通じて成し遂げられるのではないかと思います。
最初は「今の自分は自分じゃない」と自己否定的だったのに、対話のなかでこちら側が丁寧に受け止め続けることによって、迷いながらも患者さんが許容され、「今の状態でも良しとしよう」というように肯定的になっていくのです。
コミュニケーションに「新しい視点でのスキルを身に付けたい」という方に勧めたい
SNS看護をお勧めしたいのは、患者さんとのコミュニケーションにおいて新しい視点でのスキルを身に付けたい方、言葉の感度を高めたい方、対話を磨いてみたい方、コミュニケーションのパターン化を抜け出したい方です。
目の前の患者さんの発する言葉にあるリアルな思いに触れてみたい方にとって、SNS看護は相手の言葉を文字として見ながらじっくり考えて受け答えできるという良さがあります。その対話の経験は現場のコミュニケーションにも生きてくると思います。患者さんが必要とする言葉をかけ、病気や治療と共に生活する患者さんの思いが、より豊かに見えてくるようなコミュニケーションがとれるようになるのではないかと思います。
