Tomopiia 対話看護専門士
SNISインタビュー
神奈川県在住
訪問看護師のなつめさん
新卒で就職した大学病院では血液内科や乳腺外科に勤務していました。「退院指導用パンフレット」を用いて説明をするのですが、患者さんもまだ経験したことのない退院後の生活ですし、私も自分が体験したことではないのでその内容がきちんと伝わっているのか評価できないことにもどかしさも感じていました。
たとえば乳腺外科だとパンフレットには「肌着は肌にやさしいものを」などと書いてはあるのですが、それをルーティンとして説明してそこで終わっている感じがありました。本当はその先に患者さんの知りたいこともあるのだと思いますが、個人差もあるためにお互いにそれ以上は聞きにくく触れないまま終わることも多くありました。
そんなときに病院でTmopiiaの対話看護専門士のパンフレットを見かけました。患者さんとのコミュニケーションをどう深めていけばよいかを考えていたときだったのでパンフレットに書かれていた「(患者さんと)じっくりお話を聞きたい人」「深くかかわっていきたい人」という言葉にピン!と来て研修を受講しました。
心の中には“受け止めること”と“こうなってほしい”のせめぎ合いがある
研修を受講しての感想は一言にすれば「びっくりした」に尽きます。というのも私自身はそれまでも退院された患者さんからお礼の手紙をいただいたり、会いに来てくださることもあったので患者さんとのかかわりを大切にしてきたという自負がありました。だからバーバル(言語的な)コミュニケーションも十分できていると思っていたのです。
ところが病院での対面コミュニケーションと違ってSNSだとぜんぜんコミュニケーションできないのです。「表情や仕草を見る」「ジェスチャーで補う」「声のトーンを変える」「相手と近い距離をとる」といった対面だからこそできるノンバーバル(非言語的)コミュニケーションにいかにそれまで自分が頼っていたのかを知りました。自分のもっていたコミュニケーションのアンテナは、言語だけになると途端に果てしなく弱いことに直面したのです。
研修後に気をつけるようになったのは、相手に自分の理解が正しいのかを確認するようになったことです。これまでもしていたつもりだったのですが、自分なりに勝手に推測して進めていたようなところがあります。今はいったん自分の言葉に落とし込で相手に確認するようになりました。
看護師は学生時代から目の前の事象が他の事象とどのようにつながるのかを関連図に書くといったトレーニングを受けています。だからどうしても目の前の情報に対して問題解決思考が働いて「原因を特定して解決に導こう」としがちです。ベッドサイドでは患者さんとの会話から患者さんの特性を見つけて対応することができると私は評価をされていました。でもそれは「現場のさまざまな感覚」が働いていたのだと思います。
SNS看護だとその「さまざまな感覚」を「言葉に置き換える」ことが必要になります。ベッドサイドなら相手の表情や声のトーンなどから相手との距離感を感じることができますがSNS看護だとそれを言葉だけで行います。だから自分の憶測で相手の気持ちをわかったつもりにならないことが大切。相手からの情報を否定も肯定もせずにまずはきちんと受け止めることを心がけています。
と言っても心の中には相手からのポジティブな言葉を待っている自分もいます。だから正直に言えば今でも「受け止めること」と「こうなってほしい」という心のせめぎ合いがあります。
「コミュニケーションならできている」という方こそ、新たな可能性を見出せる機会になる
SNSによるコミュニケーションのハードルは最初は高く見えるかもしれません。でも文字にはひらがな、カタカナ、漢字、句読点、絵文字などいろんなツールがあります。使い方次第でコミュニケーションの幅はぐんと広がります。返信の頻度さえもコミュニケーションのツールになります。私自身も文字による対話を重ねているうちに、利用者さんからたった一つの絵文字が入ったことで相手の心が「つかめた!」と思える瞬間を経験しました。そういうコミュニケーションの感度が研ぎ澄まされていくのがSNS看護の魅力です。
コミュニケーションに興味のある方はもちろんですが、「コミュニケーションならできている」と思っている人にこそさらなるコミュニケーションの可能性を学びなおす機会になります。興味を持たれたらぜひ研修を受けてみてください。